みなさんはハラールって耳にしたことはありますか?
ゼラチンNo!アルコールNo!
こんな風に断られてしまった経験ある方もいるかと思います。
私は学生時代にイスラムの友達とお寿司を食べに行ったときに醤油にアルコールが入ってて食べれないといって困惑した思い出があります。(まあ、だんだん慣れて食べるようになっていましたが)
今回は宗教と医薬品を絡めた話題を取り上げたいと思います。
目次
ハラールとは?
そもそもハラール(ハラル)とは、イスラム教の教えに従い、許可されたもの、合法的という意味であり、イスラム教の基準に合致したものを指します。イスラム教では、食品や飲料など、日常生活におけるあらゆるものに対してハラールなものを選ぶことが推奨されており、それにはもちろん医薬品も例外ではありません。(ハラールに対して禁じられたの意味を持つ言葉はハラームです)
裏を返せばイスラム教で禁じられたものが製品やサービスに含まれていないものがハラールになります。
ぱっと誰もが浮かぶものが豚やアルコール含んでいないものかなと思いますが、イスラム教の教えに則っていない屠畜工程であったり、工場の部品に豚由来のものを使用しているとアウトなど結構厳しい印象です。
ハラール医薬品の製造や使用には、以下のような基準があります。
- 材料の選択:ハラール医薬品は、イスラム教の教えに従って製造された材料のみを使用します。たとえば、動物性の原料はハラールであることが条件ですが、豚由来の原料は禁止されています。
- 製造過程:ハラール医薬品は、製造過程でクロスコンタミネーション(混入)がないように注意が必要です。例えば、ハラールな原料と非ハラールな原料が同じ製造ラインで加工されることは避けなければなりません。
- 製品の成分:ハラール医薬品には、アルコールなどの禁止物質が含まれていないか、極力含まれていないことが求められます。また、製品の使用においても、イスラム教の教えに反することがないように注意が必要です。
ハラール認証
ハラール認証を受けるには各国のイスラム教団体の認証を受ける必要があります。日本では何団体か存在するようです。
←よくこんなマーク見かけますよね。
認証マークは認証する団体によって異なるようです。
ハラール医薬品市場:国内市場から海外へ
ハラール医薬品市場の拡大
イスラム教はキリスト教に次いで世界に2番目に多い宗教で、世界のムスリムの人口は19億人、2030年にはキリスト教徒を抜いて世界一となり、2050 年には世界人口の3分の1になるという予測があるそうです。
ハラール医薬品の市場は、イスラム教徒が多い地域(アジアが中心)で拡大しており、特にハラール認証を受けた医薬品は、イスラム教徒の間で人気があります。そのため、多くの医薬品メーカーがハラール認証を取得することで、市場の拡大を図っています。
イスラム教の教えに基づくハラール医薬品は、イスラム教徒のみならず、イスラム教の教えに基づくハラール医薬品の使用に興味を持つ人々にも選ばれています。そのため、ハラール医薬品は、世界中で需要が高まっています。
ハラール医薬品市場の課題
ハラール医薬品の課題となるのがなんといってもアルコールと豚由来成分。
アルコールは消毒に欠かせないだけではなく、化学成分の合成や抽出には欠かせません。
飲酒はご法度であるものの、工業製品に関しては飲料メーカーではなく工業メーカーから原料を調達するなどは許容されているそうですが、医薬品に残留するアルコールはまだまだ議論されているそうです。
豚由来成分はゼラチンやぺプチンなど多岐にわたります。イスラム教の国々ではこれらが配合された医薬品はある程度供されているものの、ワクチンなどで豚由来のゼラチンなどが含有されていると拒否する人も少なくないそうです。
コロナワクチンの接種どうしてたの???
これらの事を踏まえると、ものによってカプセル製剤などが全然だめになりそうな印象を受けます。設備投資などの面も考えるとハラール認証を取得するハードルは高いのが実情です。
少し古い記事ですが、エーザイがインドネシアでハラール認証に向けて動いてました。
現状は分かりませんが、2019年にはJICAと共同で報告書を作成しています。レケンビなど中国への進出も目立ちますが、今後市場を拡大していく可能性はあるのかも。
ちなみに今はEAとして医薬品部門は切り離されてしまった味の素ですが、マレーシア工場を通して味の素をはじめとする各種調味料はハラール認証を取得しており、足掛かりを作っています。
大正製薬もリポビタンでハラール認証を取っているとか。
今後アジアをはじめとするイスラム教徒が占める国への進出には、様々な配慮や設備投資が必要になってくるのかもしれません。
ムスリム患者さん対応必見!牛豚原料含有薬品データブック
ありがたいことに東京北医療センター薬剤室では、インターネット上で牛豚原料含有薬品データブックを発行されています。
ハラール認証を満たしているものではありませんが、ムスリムの方がいらしたときには参考になるかと思いますので、共有させていただきます。
2016年に作成されているようなので、こちらもご留意ください。
引用元:牛豚原料含有薬品データブック(東京北医療センター 2016.10)
最後に
最後までご覧いただきありがとうございました。
2023年の国内医療用医薬品市場は11兆円を超えるなどと若干増加はしているものの、少子高齢化と薬価制度により、依然として厳しい状況が続いています。
まずはアメリカや欧米市場に進出している企業が多いですが、これからは人口増加が著しいアジアが伸びていく余地があると思います。
今後製薬会社がどのようにして宗教の壁を乗り越えていくのか気になります。
ちなみにコロナワクチンはハラール認証取っている国もありました。インドネシアは大統領が率先して摂取したとか。