【医療用語解説】遺伝子検査とは?がんを例に挙げて解説!

医療用語解説

近年様々な検査技術が発達し、個別化医療の話題も盛んになってきました。

遺伝子検査は、個人の遺伝情報を解析することで、遺伝的な疾患や特性を特定するための手法です。この検査は、医療の分野だけでなく、祖先の起源や家族歴を探求するためにも利用されます。以下では、遺伝子検査の基本的な概念と、その利用について詳しく説明します。

個別化医療とは?

個別化医療(Precision Medicine)は、患者さんの遺伝子や環境、生活習慣などの個々の要因を考慮し、最適な予防、診断、治療を提供する医療のアプローチのことです。

従来の医療では、ガイドライン等に基づいて治療が行われることが一般的です。しかし同じ治療法でも患者さんの体質などによって効きが良い・悪い、副作用が少ない・多いなど個人差があります。

最近では薬の効き方には患者さんの遺伝子や発現しているタンパク質によって、個人差が生まれていることが分かってきています。発現している遺伝子やタンパク質は、生まれつきの差であったり、紫外線など外的要因によって生じるもので個人差があります。

個別化医療は個々の患者さんの遺伝子プロファイルを考慮し、その人に最適な治療法や予防策を講じることで、効果を最大限発揮することが期待されています。個別化医療を実現するためには、治療に関連する遺伝子検査が欠かせないものとなっています。

オーダーメイド医療など様々な呼び方がありますね。

遺伝子検査

遺伝子検査の基本

私たちの身体は遺伝子という設計図に基づいて作られています。その遺伝子の本体となるのがDNAです。DNAは糖と塩基で構成され、中でも4つの塩基の(A:アデニン、T:チミン、G:グアニン、C:シトシン)配列によって体内で各種のタンパク質が合成されています。

遺伝子に異常があると塩基配列が変わってしまい、作られるはずのタンパク質が作られなかったり、予想外のタンパク質が作られてしまうことがあります。

通常、異常は察知して変わってしまった塩基配列を修復する力が働きますが、この機能が働かないと変化した遺伝子が残り、結果としてがんなどの病気に繋がります。

通常の遺伝子検査では、1つか少数の遺伝子を調べて診断を付けており、その検査結果をもとに薬を選びます。肺癌や胃癌、乳癌など一部のがんではよく発現する遺伝子/タンパク質があります。

例えばHER2(ハーツー)は、がん細胞の増殖に関与するたんぱく質の1つで、胃癌では20%程度の患者さんで過剰発現が認められています(HER2陽性)。がん患者さんでよく見られるようなHER2であれば医師の判断で早期の段階で遺伝子検査を行い、抗HER2療法の標準治療の選択の有無などを決定します。

特定の変異が認められれば、コンパニオン診断薬と呼ばれる薬を用いて、抗HER2抗薬などの分子標的薬が有効かどうか用いたりもします。

SNSでよくある検査の広告は基本的に自費診療であることには注意が必要です。医師の判断で必要とされたときに保険適応となります。そのほか注意点は後述します。

遺伝子パネル検査

近年では、次世代シークエンサーを用いて病気の原因遺伝子を一度にまとめて調べることができるようになりました。このように複数の遺伝子をまとめて検査することを遺伝子パネル検査といいます。

多いものではがんに関連した737遺伝子も調べることが可能だそうです。

がんの分野では、2019年から様々な遺伝子パネル検査が保険適応となっています。

保険診療で受けられるのは全国のがんゲノム医療中核拠点病院、がんゲノム医療拠点病院、がんゲノム医療連携病院などになります。

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遺伝子パネル検査で保険適応取ってるのは中外とガーダントヘルス、コニカミノルタあたり?

遺伝子検査のメリットと課題

  1. メリット:
    • 個人化医療の促進
    • 疾患の早期発見と治療の最適化
    • 予防医療の促進
    • 遺伝に関連するものであれば、近親者への発病予想や治療効果を予測できる
  2. 課題:
    • 保険適応になっているものは限りがある
    • プライバシーと倫理の問題
    • 結果の解釈の難しさ
    • 心理的および社会的影響

遺伝子検査は医師の判断で必要になった際に保険が適応され、どんな検査でも保険が適応される訳ではありません。がん遺伝子パネル検査では、①標準治療のない固形がん患者さん➁標準治療が終了、もしくは終了見込みとなった固形がん患者さんといった方のみ対象となっている点には注意が必要です。

また、検査すれば確実に適した治療法が見つかるわけではなく、実際にはがん遺伝子パネル検査の結果10%程度しか薬剤に結びついていないそうです。遺伝性のがんであれば、家族への心配なども生じるので必ずしもやって良かったのかは受け止め方によるといった課題もあります。

医療の限界があることには留意する必要がありますね。

最後に

遺伝子検査は、今後ますます発展していくかと思います。まだまだ課題は多く、費用もかかるものの将来的には自分に合った治療方法を選択できる時代になってくれることを願ってます!

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