【企業研究】田辺三菱製薬の将来性は?強みは?

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企業研究第4弾!

今回は田辺三菱製薬について掘り下げていきます。

田辺三菱製薬とは?

概要

商号田辺三菱製薬株式会社
(Mitsubishi Tanabe Pharma Corporation)
本社大阪市中央区道修町3-2-10
創業1933年(昭和8年)12月13日
2007年(平成19年)10月01日(合併)
資本金500億円
従業員数6,370名(連結)、3,170名(単独) (2023年3月31時点)
経営理念
(MISSION)
病と向き合うすべての人に、希望ある選択肢を。
強みを持つ領域自己免疫疾患、糖尿病・腎疾患、中枢神経、ワクチン

田辺三菱製薬の沿革はちょっと複雑です。

引用元:田辺三菱製薬HP

大元を辿ると1678年創業の田辺製薬になりますが、東京田辺製薬が合併を繰り返してできた三菱ウェルファーマと2007年10月1日に合併して誕生した製薬企業です。

製薬会社は買収と合併の歴史を繰り返していますが、群を抜いて様々な企業がくっついてできた会社です。

Lapin
Lapin

お世話になった田辺三菱のMRは吉富製薬出身でした、、。

田辺製薬は日本で最も歴史のある製薬会社だそうです。
(ちなみに世界で最も歴史の長いのはメルク)

「三菱」の名がついているように、現在は三菱ケミカルホールディングス(三菱ケミカルHD)の事業会社の1つで、2020年2月27日に上場廃止し、三菱ケミカルHDの完全子会社となっております。

また、医療用医薬品以外にもOTC医薬品も手掛けています。
タリオンやフルコートなどは目にしたことある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

Lapin
Lapin

田辺三菱は完全子会社化に伴い非上場となっているので、最新の決算などは三菱ケミカルHDから読み解いていきます。

海外比率

三菱ケミカルHD2024年3月期決算説明会資料をもとに作成

田辺三菱製薬の2024年3月期の売上は4,374億円でした(前年同期比+5.7%)。国内の売上が約7割を占めていますが、前年同期と比べると大幅に海外の売上が減少しているように見えますが、昨年ノバルティスともめていたジレニアのロイヤリティ収入を一括で1,260億円計上していた影響です。

国内医療用医薬品の売上が微減していますが、新製品の販売は堅調かつ北米でラジカヴァの伸長とのことで来期は4,490億円を予想しています。

製品別売上高(日本)

三菱ケミカルHD2024年3月期第3四半期決算説明会資料をもとに作成

国内の医療用医薬品の2024年3月期累計売上収益は3,008億円でした。長期収載品にはレミケードの2346億円が含まれており、ステラーラやシンポニーなどといった自己免疫疾患の治療薬が大きな柱となっております。

2025年3月期の国内医療用医薬品の売上は3,156億円(+4.9%)を予想しています。

重点疾患領域

三菱ケミカルHDは中枢神経免疫炎症糖尿病・腎の3つのコア領域とがん領域を合わせた4つの領域に集中的な投資を行う考えを示しています。後述するパイプラインを見ると、特に中枢神経に重きを置いている印象を受けます。

ワクチンに強みを持っていますが、販売を続けるものの開発には乗り気ではないようなので、今後はコプロなどで引っ張ってくるのでしょうか、、。

田辺三菱製薬の将来性を考える

糖尿病領域のポートフォリオ強化

2012年のテネリア発売以来、田辺三菱は糖尿病領域でのポートフォリオが充実しています。

糖尿病市場は2012年の3,925億円規模から2022年度には6,759億円規模と拡大を続けている市場です。

SGLT2阻害薬ではフォシーガジャディアンスの2強状態で、カナグルはいまひとつと印象ですが、2023年にビッグニュースがありました。

それはイーライリリーのマンジャロの販売提携!!

イーライリリーはそれまで住友ファーマと糖尿病治療薬:トルリシティで販売提携をしていましたが、2022年に打ち切って新薬を田辺三菱と提携を結ぶという一大イベントが起こりました。

マンジャロは全世界で22.1億ドルも叩き出すイーライリリーの大型製品です。

また、最近は糖尿病治療薬が肥満症の治療薬としてのエビデンスを構築しており、さらに市場が拡大しております。そういった流れを受けて肥満症の治療薬は世界中で各社しのぎを削って開発に取り組んでいますが、現在はノボノルディスクのオゼンピックとイーライリリーのゼップバウンド(一般名:チルゼパチド)が2強となり、社会問題を引き起こすほどとなっております。

国内でイーライリリーが糖尿病に続いて肥満症でも承認申請を出しており、田辺三菱はマンジャロに引き続いて肥満症の適応でも販売提携を結んだことを発表しました。

田辺三菱によると、2023年4月~12月のマンジャロの売上高は56億円(薬価ベース)。まだまだ売上を伸ばしていく未来が見えますね!

ALS治療薬が好調

2001年に脳梗塞急性期の治療薬として承認されていたラジカット(国外はラジカヴァ)。点滴静注製剤が2015年に筋萎縮性側索硬化症(ALS)が日本で適応追加されたのを機に欧米各国でALSの適応で承認、2022年経口懸濁剤がアメリカで承認されています。

特に経口で服薬できる点が評価されているようで、順調に売上を伸ばして2024年3月期には国内外合わせて847億円を計上しています。

さらに2024年にはラジカヴァがアメリカで希少疾病用医薬品排他的承認を発表しています。

また、アミリックス社がALS経口薬として発売していたレリブリオががPhaseⅢでプラセボと比較して統計的有意性が満たせなかったとの発表をしており、販売中止を発表しています。競合としてレリブリオはラジカヴァの売上を鈍化させていた要因なだけに、今後も売上拡大が見込まれます。

Lapin
Lapin

製薬業界の立場から言えば、ALS治療薬は少ないので正直レリブリオの開発失敗は残念です、、。

コプロで成功か

前述のステラーラやマンジャロの提携のように、田辺三菱はコプロなど他社との提携に成功している印象を受けます。

2024年5月:イーライリリーと肥満症治療薬「一般名:チルゼパチド」の販売提携を発表
2024年5月:参天製薬とアレルギー性結膜炎治療剤「アレジオン®眼瞼クリーム0.5%」の同販売促進契約を発表
2024年1月:ファイザーと5種混合ワクチン「ゴービック」のコプロ発表
2022年7月:イーライリリーと糖尿病治療薬「マンジャロ」の販売提携を発表
2020年5月:扶桑薬品とHIF-PH阻害薬「バフセオ」のコプロ発表
2020年2月:ヤンセンファーマと「ステラーラ」の潰瘍性大腸炎の適応追加についてもコプロ対象拡大を発表
2017年3月:第一三共と選択的DPP-4阻害薬「カナリア」の販売提携を発表(以前にはテネリア・カナグルで提携)
2017年2月:ヤンセンファーマとクローン病治療薬「ステラーラ」のコプロ発表
2016年3月:ヤンセンファーマと関節リウマチ治療薬「シンポニー」のコプロ発表(2011年からの契約の変更)


自社開発製品も多いですが、イーライリリーやヤンセンファーマ由来の大型製品も多いですね。各領域の強みを持つ企業と協業することで、製品の充実を図っています。

上記に記載はしていませんが、持田製薬の主力だったレクサプロも過去には提携していたようですね。

現場のMRは新薬上市の経験を積める可能性が高く、ブロックバスターに携わる機会が多い点は、魅力的です!

田辺三菱の抱える課題:立て続けの開発中止

直近の業績は好調そうですが、不安材料も見ていきたいと思います。

ここ数年で様々な開発品目がありました。

2020年:季節性インフルエンザワクチン「MT-2271」
2021年:パーキンソン病治療薬「ND0612」、潰瘍性大腸治療薬「MT-5745」
2022年:変形性膝関節症治療薬「MT-5547」
2023年:新型コロナワクチン「MT-2766」、Muse細胞を用いた再生医療等製品

医薬品開発に失敗はつきものですが、大幅な減損が目立っています。

コロナワクチンの断念:メディカゴ社の事業撤退

2023年2月にカナダ子会社で開発を進めていたコロナワクチン事業からの撤退を発表しました。植物由来のワクチンで世界初の技術となる予定でしたが、カナダで承認まで漕ぎつけるも量産化が上手くいかなかったことが原因とのことでした。

結果として会社も精算しており、480億円の減損損失を負いました。

4つの重点領域以外のノンコア領域まで手広く開発に着手していたことで、損失を被ったことを当時の社長のギルソン氏が認めていました。これらの開発中止を受けて4領域の投資が加速していきそうです。

主力製品・ステラーラの特許切れ:BS参入の脅威

ヤンセンファーマとコ・プロモーション契約を結んでいるステラーラの国内特許切れによる後発参入が近づいています。国外では2024年半ばに独占権が切れる見通しで、ヤンセンファーマを抱えるジョンソンエンドジョンソン(J&J)は売上高の鈍化を見込んでおり、国内ではすでに切れたものと見られます。

国内ではMeiji Seika ファルマや富士製薬、セルトリオンがBS(バイオシミラー)の開発に取り組んでいるようです。

中でも富士製薬はステラーラのBS(ウステキヌマブBS)の承認を2023年9月に取得しており、販売が近づいています。ただし、先発のステラーラの持つ活動期クローン病の維持療法や潰瘍性大腸炎の維持療法の適応はないため、まだ影響は限定的なものだと見られます。また、現時点では薬価未収載であるためすぐに影響は出ていません。

近いうちに後発が入ってくることは確実なので、ステラーラの一定の売り上げ減は避けられないかなと思います。

パイプライン

HPによると、現在は17のパイプラインを抱えており、そのうち5つが申請段階にあります(国内外)。

内訳としては、

中枢神経:8
免疫炎症:5
がん:2
その他:2

田辺三菱HPより作成(2024年5月15日)

中枢神経が最も多いですが、今まで製品を抱えていなかったオンコロジー(がん)領域の開発品がPhaseⅡ~Ⅲに1つずつあります。MT-2111で2試験で、この候補薬はADCセラピューティクスからの導入品で、田辺三菱初となるADC(抗体薬物複合体)となります。

MT-2111ははZYNLONTAの製品名で2021年4月にアメリカで迅速承認されており、既に発売されています。2023年第4四半期には1,660万ドルを売り上げているようで、上市すれば大きな製品に育ってくれそうな気がします。

Lapin
Lapin

ADCといえば第一三共のエンハーツやアステラスのパドセブが有名で、いずれも大きな売上を上げています。

実はオンコロジーのパイプラインにPhaseⅠにもう1つありましたが、本記事執筆中にHPから消えました、、、。残念です。

また、自社開発や共同開発以外に、キリンやアメリカや中国の企業へ導出も行っているようですね。

平均年収推移:完全子会社化前の直近は846万円!!

完全子会社化しているため、現在は田辺三菱単体の平均年収は分かりませんが、2019年の平均年収は846万でした。

10年間で最も低い数値となっておりますが、それでも800万以上は堅いのはさすがですね。

最後に

最後までご覧いただきありがとうございました。

2023年の売上、来期の予想をみると国内はあまり変動なくラジカヴァで海外売上高比率が高まりそうな気がします。国内は薬価改定の影響も大きく、ステラーラの後発参入の恐れもあるので、今後はマンジャロや他の新製品をどこまで伸ばせるかにかかってそうです。

ラジカヴァは競合薬の開発失敗もあり、1000億円の超えていける製品化と思うのでまだまだ成長の余地はありそうかなと思います。

また、中枢神経のプレゼンスを高めていくことはもちろん、初のオンコロジーが成功するのかにも今後注目していきたいとですね!!

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